仕事をする上で大切なことの中で必ず言われることが、コミュニケーションの必要性です。企業で人を採用するときも、採用する側がその人に求めるものの一つだと思います。
「コミュニケーションとは何ですか?」と聞くと、色々な答えがあると思いますが、その中の一つに相手の話を「聴く」ということがあります。「聴く」という漢字は文字通り、耳と目そして心をもって相手の話を聴くことです。「今、目の前で話している人はいったいどんな気持ちで話をしているのだろう」と耳を傾けその人の話しを聴くということです。
昨今では学校での体罰、或いはスポーツ界でも暴力行為やパワハラが行なわれ、柔道界でも問題となったニュースが有りました。実際の状況はどうであったかはわかりませんが、そこには言葉をとおして相手の話を聴くこと、お互いのコミュニケーションの欠如ということも確かにあったのではと思います。
企業でも同じようなことがあります。仕事や人間関係で社員が心の病になって仕事に出て来られない、厳しい言葉を受けてすぐに辞めてしまう社員が多いといった状況です。
私も自分で仕事をする前、長い間サラリーマンとして営業をしていましたので、同じような状況の中で仕事をしたことがあります。営業の仕事はある意味数字がすべて、結果がすべての世界でもあります。目標としていた数字に到達できなかったとき、営業会議で怒られ、怒鳴られ、皆それが嫌で、怒られないよう何とか目標に達するよう仕事をしていたと思います。今思い返すと自分の反省点や上司の立場もよくわかり、懐かしい思い出となっていますが。。。
そこでは、何のために仕事して利益を上げるのか、個人の目的、部門の目的、そして会社の目的や思いなど考える余裕もなく、毎日数字に追われて仕事をしていたことを思い出します。上司もただ、“頑張れ”“何をやっているんだ!”といった言葉しかなく、部下は“何とか頑張ります!”といって仕事をしていました。そこには上司と部下のコミュニケーションもなく、信頼関係もなく本当の意味で仕事とは言えない状況でした。
もし、そこで上司から具体的に、その数字の意味、会社の考え方、或いはどうしたら新しい顧客を開拓できるのか、商品の売上げを伸ばすことができるのか、具体的な指示や指導があって、部下もそれを考え行動し、上司も一緒に考えることができたなら、もっとコミュニケーションがとれた組織になっていたと感じます。
会社が成長するためには、部下(人)の成長が不可欠です。組織は部下の個性、良いところを伸ばすことが必要です。部下の成長があって上司も一緒に成長します。そして組織が成長していきます。確かに人を育てるため、時には厳しい言葉も必要でしょう。しかし相手が求めていることや、自分はこう考えている、こう思っているということをお互いに聴き合い、受け止めることが大切です。部下の考えや悩みを汲み上げず、結果だけに関心を示している組織ではどこかでその歪みが生じてきます。部下から報告が上がったとき、問題や課題を一緒に話合って解決策を探るようなコミュニケーション、相談して良かったと感じる関係、そこには必ず上司と部下の信頼関係が生まれるはずです。
社員が心の病で会社を休むことは必ずしも職場だけの原因だけではなく、その人の私生活や環境によるところも多いと思います。しかし、上司として同僚として、ときには相手の話を聴くことができる関係を築けるならば、職場の人間関係や仕事をとおして自分の意識も変わるものです。上司の接し方で部下は変わります。組織として、上司と部下が一緒に成長する姿を考えるときではないでしょうか。 

戸谷一彦(平成25年2月14日)

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