私にとってのキャリアカウンセリング

 新卒者の就職活動が盛んに行われる季節となりました。今回は、日頃、キャリアカンセラーとして仕事をしている中で、私自身が感じている、キャリアカウンセリングについてお話したいと思います。

 まず、1つ目ですが、基本的なことですが、相談者の話しをよく聴くこと(傾聴の)大切さです。

 私自身が初めてカウンセリングした時のことです。企業に勤める30代の女性が、これからどうやって自分の生き方を探していけばよいかわからないということで、相談に来られたことがありました。当時はまだキャリアカウンセラーの資格を取って間もない自分でしたが、その人の思いや気持ちを受け止めることを大事に考え、ひたすら傾聴することを心がけていました。

 私自身の経験、自己開示もしながら、どうしてそういう気持ちになったのか、これから相談者自身がどうしていきたいのか、何回か話をしていくその中で、最後に「こんなに自分を素直に見つめる時間が持てたことはありませんでした。 一緒に話を聴いてもらい、これから、自分は何をしていきたいのか、目指していきたいのかを考えられそうな気がしてきました。本当に有り難うございました。」と、笑顔で話をされたことを思い出します。そのとき私はただ、話を聴いていただけだったかもしれません。しかし、関心を持って相談者と向き合うこと、傾聴することの大切さを知ることができたカウンセリングでした。

 2つ目は、自己の経験や自己概念の開発を通して、個人のキャリア形成にかかわる支援をすることの大切さです。

再就職相談会でのことでした。相談に来られた女性は今まで正社員としての経験がなく、20年近く専業主婦をしていました。夫と離婚し、子供は中学生ということでしたが、生活のため、何か仕事をしなければいけないという思いで相談にこられました。どちらかというと、当初、その女性は否定的な自己概念を持つ傾向にある方で、今まで専業主婦でやってきたこと以外、自分が社会で何ができるのか、何もできないのでは、という思いがありました。

 しかし、専業主婦の仕事を聞いてみると、子供と地域社会のつながりを通してボランティア活動をしたり、色々な世話役を買って出た経験を思い出し、もしかしたら人とのコミュニケーションを活かして、人や社会に役に立てることができるかもしれない、自分でもやっていける仕事があるかもしれない、何かが見つかる可能性があるかもしれない、という思いを持つことができました。

 離婚という思わぬ環境の変化の中で、どんなに厳しい状況であっても、新たな環境との繋がりを模索していけるよう、相談者自身が自己概念の成長を図れるような支援をしていくことの大切さを認識しました。

 3つ目は、目的をもって何かをすることの大切さを、一緒に考え、自立を支援していくことです。

私が学生や若年者へのカウンセリングにおいて感じることです。

よく、「これから役に立つ資格は何ですか?」「どんな仕事が自分に向いているのでしょうか?」と聞かれることがあります。私であれば、社労士なので、「その資格は難しいですか? 儲かりますか?」などと聞かれることがあります。

 資格をとることも必要かもしれませんが、でも、「何で、その資格を取るの?」「資格を取って何がしたいの?」と聴いたとき、ほとんどの人が資格を取った後のことを話すことができません。

 しかし、本当に考えてもらいたいのは、資格を取って自分は何をしたいのか、自分はなぜその仕事をしていきたいと思うのか、その目的や思いです。目的があってこそ、そこから目標や行動が生まれます。

 なぜ、自分はそう思うのか、そう考えるのか、そこに自分自身の自己概念があるはずです。そこでは、相談者への経験に対する問いかけや、その意味を考えていけるようなカウンセラーの働きかけも必要になるでしょう。

 それを導くことも、カウンセラーとして自己概念を成長させる支援につながるものだと思います。

  私にとってのキャリアカウンセリング、①傾聴の大切さ、②自己の経験、自己概念の開発を通して、個人のキャリア形成にかかわる支援をすること。そして、③目的をもった生き方、働き方を一緒に考え、相談者の自立を支援していくこと。

その3つのことを考えながら私自身キャリアカウンセラーとして、これからも、その人の人生の側面から支援をしていきたいと思っています。

戸谷一彦(平成26年3月3日)

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